セミ
どこをどう間違えたか、研究室にセミが迷い込んできた。あちこちとぶつかり、しばらくして天井に止まる。幾度か繰り返していた。
うるさいので追い出したいのだが、夜でもあり、そのために窓を開けると蛾や小さな虫が入ってきそうで開ける気になれなかった。しかし戸惑って飛んでいるセミをそのままにしておくと、この世に生まれた目的を果たさぬまま、いつかはどこかで静かになってしまうかもしれぬ。私の無精の所為で。そう思うとなんだか寝覚めが悪くなりそうだったので、やむを得まいと窓を開けた。
さてしかし、それで窓までセミをどう誘導するか。
長いものはないか。しかし叩いたんでは本末転倒だ。
そうそう、研究室の外に誰かの傘があった。これを持ち込んで少し広げた格好にする。ぜんぶ広げると扱いにくいので、少し広げて留める。軸が折れ曲がって使えないと思われていた傘が、こんなところで役に立つ。
それで窓のほうにセミを流し出すふうに動かす。そうしたところでやはりセミが騒いだりぶつかったりはあるけれど、他にやりようもない。
やってみた。
案ずるより易くセミは願ったとおりの方向へ移動し、しかし窓に当たって今度はとうとう床に落ちた。もうかなり弱っているとみえる。
傘の先端をセミに近づける。するとセミは先端にしがみついた。セミの付いた(しがみついた)傘を開いた窓にゆっくりと持っていく。先端が窓の外に出たところで軽く振ると、セミはじじっと鳴いて飛んでいった。見返りに蛾の何匹かは覚悟していたのだが、案外入ってこなかった。
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