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2006/12/16

アンダーカレント/豊田徹也、から(その1)

Ⅰ.

小説のようだと評されるらしい。映画を見終わった後のようだとも言われるらしい。私は後者の感覚を味わった。

アンダーカレント(豊田徹也、講談社)

最初の取っつきは悪かった。しかし程なく流れに慣れ、次第に入り込んで読んだ。読み終えるとそのまま本棚に入れる気になれず、何度も読み返している。キャラクターの絵柄も次第に馴染んできた。ときどき挟まれるギャグもすんなりと入ってきた。脇役も良いしね。

馴染むと、ひとつひとつの表情や空間が意味を持つように思え、いとおしい。実際、セリフ無しに空間が語るところもここ彼処に見受けられる。

例えば上記単行本p15。関口かなえが茶の間でご飯を食べながらテレビを見ている。行方をくらました夫と似たような背格好の遺体発見ニュースに、食事が止まる。その空間があまり重くなく置かれる。夫ではないとわかると、すぐにテレビが消された。

ぞれから、p184~185。
殆ど余計な口を利かない堀隆之が、池のほとりに立ち放心している関口かなえの前に、石を投げ込む。我を取り戻して投げられた方を見やるかなえ。堀も、立ってかなえを見ている。
堀がこの場面でもっとも多くを語っているように思える。

もひとつ、p266。
ルージュを引こうとして途中で止まっているかなえ。そのまま戻す。
 
 
感動したとかいう言葉ではなく、しっとりと心の奥に落ちて留まるような読後感だ。

それなのに、作者自身はあまり自分の漫画に満足がいっていなかったらしい。この作品を最後に「工場で働く」とかなんとか言ってそれ以来描いていないのだという。読者としては残念なことだと思う。寡作で良いから描いていってくれませんか。

豊田徹也 Wikipedia

ネット検索をすると書評の書き込みがいろいろあるから、筋などはそちらを参照いただきたい。ひとつふたつ、気に入っている書き込みもあるので紹介しておく。よかったら、それらを読んでこちらに戻ってきて欲しい。

豊田徹也「アンダーカレント」(水の記憶)
豊田徹也『アンダーカレント』(紙屋研究所)

これらの評を見ると、これが Bill Evans and Jim Hall の undercurrent というジャズアルバムに、そのジャケット写真に影響を受けていることがわかるだろう。ほんとうに、印象的な写真だ。

アンダーカレント(ビル・エヴァンス & ジム・ホール)

ついでにいうと、このモチーフは、ミレイの「オフィーリア」からの発想なんだろう。

オフィーリア(ミレイ)(サルヴァスタイル美術館)
ジョン・エヴァレット・ミレイ Wikipedia
ミレイ「オフィーリア」(美の巨人たち/TV東京)

そういうのを一渡り見回した後で、もういちど、この漫画の表紙に戻る。カバーデザインは Tadashi Hisamochi(hive)。水中に浮遊する女性。にじみとぼかしのある青。なんか、いいなあ、と思う。

続きはまた明日。 
 
ps
備忘録的に。
デビュー作「ゴーグル」はアフタヌーン2003年9月号。講談社。四季大賞を受賞。
アフタヌーン四季賞の佳作入選は1987年。どのような作品なのかは不明。

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コメント

本書について記載した、はてなblogのリストがこちらにあった。
http://d.hatena.ne.jp/asin/4063720926/myblog020-22
 

投稿: ながわ | 2007/01/21 14:01

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