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2006/11/04

重度発達障害児の成長を止める“療法”

11月1日のロイターの記事でこの話は報じられている。ソースは Archives of Pediatrics and Adolescent Medicine, October 2006 である。6歳の重度発達障害の女児が医師によってエストロゲンを多量に投与され、その成長を止められる“療法”を施されているということらしい。growth-attenuation treatment と呼ばれているから、彼らはそのような治療と思っているのだろう。

ロイターの記事(Should severely disabled children be kept small?)
MSMBCの記事(ロイターの上記記事を掲載)

この“療法/治療”の根拠として、その子どもの両親がこれを望んでいるからとのことが挙げられている。両親は娘を自分の手元でずっと育てたいと思っており、しかしこれ以上大きくなると着脱衣、入浴、移動などを出来なくなるから大きくなることを望んでいないという。

論文の著者はワシントン大学の小児内分泌学の部局に所属する Daniel F. Gunther氏と、同じく小児の生命倫理学センターのDouglas S. Diekema氏。彼らはこれが“健全な”議論を生じさせることを希望している。

著者らの望む議論かどうかは分からないが、MSMBCはこのことに関する掲示板を設けている。

Message board: Should parents have the right to stunt growth of disabled kids so they can keep caring for them at home?

また PSYCH-DD という発達障害に関するリストサーブ(ML)で、このことに関する議論があるようだ。
PSYCH-DD Archives – November 2006
ここの Pros/Cons Guardianship というタイトルのテーマを見てほしい。

私は記事に目を通しただけで、あまり議論についてまで読めているわけではない。ただMSMBCのほうが参加者が広い分だけ、障害に関して余りよく知らない人も書き込んでいるように思える。

大きくなって、いわゆる強い行動障害を生じたこどもを持つ親御さんとしてみれば、このような話は身につまされるところかもしれない。これ以上大きくならないでという悲鳴も聞くところである。
ただ、件の記事の子どもがどの程度動ける子どもなのか、記事からは今ひとつ良くわからない。少なくとも今のところは周囲からの愛情を受けて過ごしているようである。それでどうぞこのままにして欲しい、知らない他人の手に渡すようなことになりたくないと言うことなのだろう。だから、既に子どもが大きくなり苦労をしている親御さんの悲鳴を当てはめて考えるのは、的を射ていないように思える。小さいままにしておきたい、という方がむしろ近いように思える(間違っているようなら指摘して欲しい)。

しかし、それはそれで親の都合であり、愛玩物としての子どもになってはいないのかという疑問は残るところだろう。生まれた子どもは親の所有物ではない。
でもそんなふうに単純に言い放って良いものかどうかも決めかねる。このことを考えるための良い近似例を考えるのだが、よくわからない。腰紐を付けて遠くへ行かないようにして育てるようなことが比較対象になるか? それならやむを得ない場合もあるだろうが、しかしいつまでもどんなときでも子どもに腰紐を付けておくのは問題が残る。そうしなくとも良いポジティブな方法も検討されるべきだろう。
今回の“療法”を希望した親も、また別の子育て観、子ども観、家族観を持てないものだろうか。私はこういう商売をしていることもあり、また知人が児童虐待に深い関心を寄せていることもあり、親子の健全な環境を重要であると思うと同時に、親でなくとも良い環境の中で子どもは育つとの感覚も持っている。家族が血がつながっていなくとも別に構わないとも思う。あまりそういうことに縛られる感覚は持ち合わせていない。

ただ、今の社会で親と子を結びつけたり離したり(離した方が良い場合もそうでない場合も含めて)することに関して、良い子育て環境と十分な支援体制があればそんな哀しい展開にならずに済むのになと思うことはしばしばある。そして、そのように十分な環境があった場合にはどう判断されるだろうということを念頭に置いたうえで目の前の状況を考えてみるのもひとつの態度ではないかと考えている。

あまり情報もない中であれこれ言ってもいけないのかもしれないが、ひとまず思ったことを書き留めた。

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投稿: ながわ | 2006/11/07 11:41

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